ブドウ品種のちょっと深いはなし Vol.2~LAGREIN~

こちらの記事は、「Vino Hayashi Mag (2019年8月15日更新)」の転載になります。

 

イタリアに2000種以上あるといわれる「土着品種」を、ひとつずつご紹介していきます。

 

第2回目は・・・
南チロルで愛される『LAGREIN/ラグレイン』

 

 

Lagreinは1970年に公的にブドウの品種登録がされました。

Teroldego(テロルデゴ)とまだ名の知れない品種との交配品種とされています。

 

近年の研究において、Lagreinの名称はドイツ語で「ラガリーナ谷」を意味する「Lagarino ラガリーノ」つまり、トレント近郊の「Vallagarina ヴァッラガリーナ」に由来すると考えられます。

 

Lagreinはその歴史において、いくつかの矛盾と疑問点を抱えた品種と言え、ボルツァーノ平原でかなり古くからLagreinという品種が栽培されていたことが事実である一方で、1900年代前半までトレンティーノ地方でこの品種が栽培されていたことがないというのが確実とされているのです。

 

冒頭の呼称の由来に関していえば、実際にトレントのMeano(メアノ)村でLagarinoと呼ばれる品種が栽培されてはいましたが、実はこの品種は白ブドウであり、Vallagarinaつまりラガリーナ谷では一切知られていない品種とのこと。

 

一般的には、その起源はギリシャの古代品種「Lagaritanos (Lagarinoラガリーノ)」にあるとの説が信じられています。それは、紀元前3~4世紀頃、古代ギリシャ移民が海を渡って現在のバジリカータ州のイオニア海沿岸に建設したMagna Grecia(マーニャ・グレーチャ)と呼ばれる植民地居住地帯の一つ「Lagaria  ラガーリア」で、持ち込まれたブドウの種から栽培していた品種であるという説です。時代を経てアディジェ川を遡り、ヴェロネーゼ平野とロヴェレート丘陵地に到達し、やがてボルツァーノの盆地に根付いたと考えられています。

 

Lagreinについて最初に記されているのは1097年刊行の書籍で、ボルツァーノ近郊グリエス(Gries)の修道院で栽培されていたと書かれています。

 

1370年には、神聖ローマ皇帝・カルロ4世が、兵士へのワインの供給において、フルボディタイプのラグレインを禁止し、別の品種スキアーヴァで造られたよりライトなボディのワインへと切替えさせました。おそらくこれがきっかけで、Lagreinはロゼワインの醸造方法で造られるのが主流となり、「Kretzer クレッツェル」と呼ばれるようになったと考えられます。この名は発酵時のモストから果皮を取り除く際に使用していた籐で出来た棚の名前「Kroizere」に由来します。

 

一方で、「Lagrein Dunkel ラグレイン・ドゥンケル」と呼ばれたフルボディタイプのワインは、貴族、王族、司教などを魅了したため、大変高価なものとなり当時一般市民へは流通されませんでした。その後、1526年に農民を中心とした反乱が起き、変革を指導した南チロル出身のミカエル・ガイスメイヤー氏の功績によってしだいに市民へ普及するようになりました。

 

ラグレインはトレンティーノ=アルト・アディジェ州全域に広く普及し、全県で栽培されています。

また、ロンバルディア州全域、ヴェネト州の一部でも栽培が見られます。

比較的温暖なエリアを好む品種で、アルト・アディジェでは生産されるブドウの約8%を占めます。(2016年)

 

ワインは、主に2種類のタイプが造られます。タンニンが強すぎる品種のため扱いが難しいとされており、1985年くらいまではロゼが主流でした。1960年からマセレーション(果皮浸漬)をする一般的な赤ワインのタイプも造られ始め、しだいにこのラグレイン・ドゥンケル(ラグレイン・スクーロ)のほうが普及していきました。

 

≪Lagrein Dunkel/Lagrein Scuro≫

黒みがかった濃い深紫色。ブラックベリー、カシスなどの黒系果実やクランベリー、クローブやナツメグなどのスパイスの香り。ステンレスタンクで醸造した場合は、若々しいフレッシュなワインに仕上がります。木樽を使用して熟成した場合は、厚みのあるボディがしっかりとしたワインとなります。

 

≪Kretzer/Rosato/Rosè≫

赤みがかった淡いルビー色。通常はステンレスタンクで醸造されますが、木樽で熟成されると、ほんのり感じられる紫色の野菜のフレッシュな香りにバルサミコやチョコレートの香りのニュアンスも。エレガントなタンニンがあり、フレッシュ感と柔らかいボディーが特徴です。

 

 

 

果房は短いもの(コルト)と細長いもの(ルンゴ)との2つのタイプがあり、基本的には中程度でピラミッド型。稀に円錐形もみられます。時に1つか2つの小さな岐肩をもっています。果粒も中程度の大きさの卵形で、密着度は中程度です。果皮は厚く青みがかった黒色。表面がやや蠟質の白い粉で覆われています。収穫時期は遅く10月中旬。 葉の大きさは中より若干大きめ、五角形で三裂し、表面は無毛で滑らか、光沢のない深緑色をしています。

 

 

 

イタリアワインの土着品種とは?

 

土着品種とは、一般的に、その土地で生まれ育った固有の遺伝子型をもつ品種のことを指します。イタリアの土着品種2,000種を超えるとも言われています。南北に長いイタリアの国土、海と山に囲まれた地形、多様な気候、全20州の国全土でワインが造られているという唯一無二の環境がその土着品種が生まれ、また、それぞれの地域がもつ複雑な長い歴史と独自の文化がマイナーで作付けの少ない土着品種を守り抜いてきました。それゆえ、イタリアワインは複雑でつかみどころがありません。しかしその「多様性」こそがイタリアワインの魅力となっています。

 

 

 

-参考文献-

『土着品種で知るイタリアワイン』中川原まゆみ著(ガイアブックス)

『プロフェッショナルのためのイタリアワインマニュアル イタリアワイン』宮嶋勲監修(ワイン王国)

『ワイン基礎用語集』遠藤誠監修(柴田書店)

『Guida ai Vitigni d’Italia』Slow Food Editore

『Il Vino Italiano』AIS-Associazione italiana Sommeliers

『VINO MANUALE PER ASPIRANTI INTENDITORI』Ophélie Neiman (GIUNTI)

『ATLANTE del VINO ITALIANO』Vittorio Manganelli – Alessandro Avataneo (LIBRERIA GIOGRAFICA)

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