ブドウ品種のちょっと深いはなし Vol.3~FRIULANO~

こちらの記事は、「Vino Hayashi Mag (2019年9月4日更新)」の転載になります。

 

 

 

イタリアに2000種以上あるといわれる「土着品種」を、ひとつずつご紹介していきます。

 

第3回目は・・・
飲む人を幸せな気持ちにしてくれる『FRIULANO/フリウラーノ』

 

 

 

ここ2世紀の長きに渡って、ヨーロッパ内の至るところでブドウ品種フリウラーノの起源について議論がなされてきました。というのも、イタリア・フリウリ州で親しまれてきたこの品種「Tocai Friulano (トカイ・フリウラーノ)」と、ハンガリーのトカイ(Tokaj)地区で造られる貴腐ワインで有名なトカイワイン「Tokaji」とが、別々の綴りながら同じ名称で呼ばれてきたことが原因です。

 

このトカイワインは「Furmint (フルミント)」と呼ばれる品種から造られますが、トカイとフルミントとどちらが先か後かという議論には諸説あります。トカイが先という説として、1632年、フリウリ・ゴリツィア県のFormentini伯爵が娘をハンガリーの伯爵に嫁がせる際、嫁入り道具としてトカイの苗木を持っていかせ、それが根付いて甘口貴腐ワイン「トカイ・アスー」が生み出されたとする説で、「Furmint (フルミント)」は伯爵の姓formentiniに由来するとされています。一方で、フルミントが先という説は、1860年代、フリウリがオーストリア=ハンガリー帝国領だった時代、Ottelio伯爵がハンガリーのトカイ地区からフルミントを運び、フリウリのトカイになったというものです。

 

いずれにせよ、1763年オーストリア軍の地図にはゴリツィア周辺に「Tokaier (トカイアー)」という集落の名が見られ、また1811年のナポレオンの地図にも同地域に「Toccai (トッカイ)」という名の小川や地名が確認されています。

 

1980年代に入り、アメリカ・カリフォルニア大学デービス校での研究において、「Tocai Friulano」はフランス・ボルドー地方の古代品種で現在はチリで栽培が盛んである「Sauvignonasse (ソーヴィニヨンナッセ)」(別名Sauvignon Vert)と同一種であるという見解が示されましたが、当然のことながらイタリアの学者はこれに反対しています。

 

1993年11月にハンガリー政府とEUがイタリア政府に対し、イタリアの品種名である「トカイ」とハンガリーの地域名である「トカイ」との混同を避けるために異議申し立てを行ないました。その後、「トカイ」の呼称使用について幾度となく話し合いの場が設けられましたが、イタリアは事実上敗訴。2006年7月4日にTocai Friulanoの同意語としてFriulanoが品種登録されました。イタリア国内で販売されるワインには「Tocai Friulano」の呼称は継続して使用出来きますが、2007年3月31日を期限として、イタリア国外へ輸出するワインには「Tocai」の名称を記載してはならないという規定が設けられました。また、イタリアそれぞれの地域で品種の呼称が異なり、フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州では「Friulano (フリウラーノ)」、ヴェネト州では「Tai (タイ)」と一般的に呼ばれるようになりました。

 

フリウラーノはフリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州全域、ヴェネト州全域、ロンバルディア州の一部に普及。フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州の8つのDOCのうち、DOC Carsoを除く7つで、品種表示ワインとなっています。

出来上がるワインは、緑がかった麦わら色。アーモンドの花、干し草、野菜やハーブを感じさせる複雑で繊細な香り。適度なアルコールと酸味、余韻に感じられるミネラルとのバランスがよく、柔らかでかつ骨格のあるボディーとなります。フリウリ産の良質なフリウラーノは、2~3年の熟成により、典型的なビターアーモンドの美しい余韻が感じられます。

 

 

 

果房のサイズは中程度で、2つの岐肩を持つ円筒円錐形。 果粒も中程度の大きさで円形、やや密着型。 果皮はやや厚く、色はクローンや栽培地によって黄金色か緑色と異なります。表面が蠟質の白い粉で覆われている。 収穫は一般的に9月の第1週から第2週。葉は大きめで、丸みを帯び五角形で三裂しています。表面は毛がなく、光沢のない鮮やかな緑色。

 

 

 

イタリアワインの土着品種とは?

 

土着品種とは、一般的に、その土地で生まれ育った固有の遺伝子型をもつ品種のことを指します。イタリアの土着品種2,000種を超えるとも言われています。南北に長いイタリアの国土、海と山に囲まれた地形、多様な気候、全20州の国全土でワインが造られているという唯一無二の環境がその土着品種が生まれ、また、それぞれの地域がもつ複雑な長い歴史と独自の文化がマイナーで作付けの少ない土着品種を守り抜いてきました。それゆえ、イタリアワインは複雑でつかみどころがありません。しかしその「多様性」こそがイタリアワインの魅力となっています。

 

 

 

参考文献:

『土着品種で知るイタリアワイン』中川原まゆみ著(ガイアブックス)

『プロフェッショナルのためのイタリアワインマニュアル イタリアワイン』宮嶋勲監修(ワイン王国)

『ワイン基礎用語集』遠藤誠監修(柴田書店)

『Guida ai Vitigni d’Italia』Slow Food Editore

『Il Vino Italiano』AIS-Associazione italiana Sommeliers

『VINO MANUALE PER ASPIRANTI INTENDITORI』Ophélie Neiman (GIUNTI)

『ATLANTE del VINO ITALIANO』Vittorio Manganelli – Alessandro Avataneo (LIBRERIA GIOGRAFICA)

© MiPAAF 2013-2018 Tutti i diritti riservati  <http://catalogoviti.politicheagricole.it>registro nazionale varietà di vite(参照2018-02-01)

 

 

イタリアワイン土着品種研究会はこちら

 

 

 

一覧へ戻る