ブドウ品種のちょっと深いはなし Vol.11~AGLIANICO~

 

 

イタリアに2000種以上あるといわれる「土着品種」を、ひとつずつご紹介していきます。

 

第11回目は・・・
無骨だけど包容力のある『AGLIANICO/アリアニコ』

 

 

 

 

アリアニコは何世紀にもわたって数多くのバイオタイプや亜種に細分化されてきましたが、イタリアに古くから存在する品種だというのは唯一確かなことです。また、各バイオタイプごとに間違ったものも含め幾多のシノニムが存在し、それはさらなる混乱を招きました。

おそらく、歴史的な「viti aminee(アミネー科ブドウ)」の中に多くの異なる品種が含まれたと考えられます。古代ローマの政治家プリニウス氏とコルメッラ氏はアミネー科ブドウを5~6種に分類していました。明確な答えを出すことはできないのが前提ではあるのですが、重要な問題は、現在のアリアニコが昔の「カンパーニア・フェリックス(幸多きカンパーニア)」と呼ばれた豊かな土地のワイン、とりわけ古代ローマ帝国時代のファレルノの大地「アジェル・ファレルヌス」を有名にしたワインの品種の一つだったかどうか、そして何らかの形でアミネー科と関連しているのかどうかであると言えます。

 

プリニウス氏は、この品種はカンパーニア州の沿岸と後背地のテロワールに適しているので土着品種であると考察していましたが、実際には紀元前8世紀にクーマエやイスキアの開拓者によってギリシャのテッサリア地方からイタリアに持ち込まれ、広まったとされます。その後、古代ローマ時代にカンパーニア州で造られたワインはファレルノのワインと呼ばれるようになり、1500年代半ば以降に初めてMonte Somma(ソンマ山)で造られたワインに対してアリアニコという呼び名が使われたのです。

 

15世紀まではこの品種は「Hellenico(ギリシャの意)」と呼ばれていましたが、やがて「Aglianico」と呼ばれるようになりました。この時代、カンパーニア州はアラゴン王朝(スペイン北東部の王国)の植民地であり、スペイン語の「ll」はイタリア語の「gli」と似たように発音するので、このように呼び方が移行したというのはもっともらしい説であります。

この長い歴史的観点とコルメッラ氏の言語的要因のみならず、ブドウ品種の後期熟成についての記述の分析を基に 、ブドウ品種学者カルッチ氏は、20世紀初期、アリアニコは古代の神話的ワインのブドウ品種であると明言しました。しかしながら、いずれにせよ19世紀のブドウ品種学者たちは、このブドウ品種がなぜこれほど生物学的見地から多様であり同義語が豊富であるのか、その起源についての疑問を払拭することには成功していません。

1997年にブドウ品種学者グアダーニョ氏はアリアニコのギリシャ起源説を否定しており、その高い酸度は野生ブドウの典型であると主張しています。また、ラテン語の「Juliatico(7月に熟すブドウ)」が名前の由来とも考えられましたが、アリアニコの成熟は比較的に遅いためこの説は否定されました。

 

19世紀の終わり、フィロキセラ発生の前には、南イタリア全般、特にカンパーニア州、バジリカータ州、プーリア州、モリーゼ州で栽培されていました。今日では、モリーゼ州とプーリア州での栽培は大幅に縮小され、主にカンパーニア州とバジリカータ州の州境地域にのみ存在しています。

第二次世界大戦後より、Taurasiバイオタイプがイルピニア地方(カローレ谷、サーバト谷、オーファント谷)、Amaroバイオタイプがベネヴェント地方、Galluccioバイオタイプがカゼルタ付近の海沿いエリア、またチレント地方とヴルトゥーレ地方にも広く普及していきました。

1970年にイタリア全国ブドウ品種記録書に登録されました。

 

 

 

 

 

果房は150〜250g程度とかなり小さめで、円筒形か円錐形。1つ、まれに2つの岐肩を持ち、密着度は高いです。果粒も小型の円形。果皮は非常に厚く、青みがかった黒あるいは濃い紫色で表面が蠟質の白い粉で覆われています。成熟は10月中旬~11月初旬と遅め。葉の大きさは中程度で、五角形で五裂。表面に毛はなく、光沢のない濃い緑色をしています。

 

ブドウが最高の状態で完熟した場合、糖度は高くなり(22〜23%)、また酒石酸も高く、タンニンの力強いストラクチャーを持つワインとなります。長期熟成向きで、樽での熟成により品種の特性である強堅なタンニンと酸味が丸くなります。今やカンパーニア州やバジリカータ州で普及しているバリックの使用は、短期間の熟成であってもアリアニコのパワフルさを押さえ、柔らかさを与えるのに効果があります。

 

ワインの色はルビー色で、長期熟成によりガーネットやオレンジ色のニュアンスが現れます。マラスキーノチェリーのジャム、プラム、アーモンド、スミレ、スパイス、革のようなアニマル系の香りが感じられ、豊かな味わいにパワフルなタンニンが特徴で、余韻が長く持続します。
また、アリアニコは多くの銘柄においてブレンドでも使われています。

 

 

 

 

イタリアワインの土着品種とは?

土着品種とは、一般的に、その土地で生まれ育った固有の遺伝子型をもつ品種のことを指します。イタリアの土着品種2,000種を超えるとも言われています。南北に長いイタリアの国土、海と山に囲まれた地形、多様な気候、全20州の国全土でワインが造られているという唯一無二の環境がその土着品種が生まれ、また、それぞれの地域がもつ複雑な長い歴史と独自の文化がマイナーで作付けの少ない土着品種を守り抜いてきました。それゆえ、イタリアワインは複雑でつかみどころがありません。しかしその「多様性」こそがイタリアワインの魅力となっています。

 

 

 

参考文献:

『土着品種で知るイタリアワイン』中川原まゆみ著(ガイアブックス)

『プロフェッショナルのためのイタリアワインマニュアル イタリアワイン』宮嶋勲監修(ワイン王国)

『ワイン基礎用語集』遠藤誠監修(柴田書店)

『Guida ai Vitigni d’Italia』Slow Food Editore

『Il Vino Italiano』AIS-Associazione italiana Sommeliers

『VINO MANUALE PER ASPIRANTI INTENDITORI』Ophélie Neiman (GIUNTI)

『ATLANTE del VINO ITALIANO』Vittorio Manganelli – Alessandro Avataneo (LIBRERIA GIOGRAFICA)

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