イタリアワイン土着品種研究会Vol.30~GRILLOの歴史~

 

■2品種の交配によって生まれたGRILLO

 

グリッロは、主にシチリア州西部トラーパニ県にて栽培されている土着の白ブドウ品種である。

シチリアに存在する100以上の土着品種は、青銅器時代(A.C.3000~A.C.1200)にギリシャから持ち込まれ、その多くはイタリアのみならずヨーロッパの品種の遺伝的起源とされる。しかしながら、グリッロはそのような自然交配の大波から生まれた品種ではなく、人為的に品種改良によって誕生した品種ということが近年の研究で判明した。

 

19世紀後半、農学者アントニオ・メンドーラ男爵(※1)は、シチリアの土着品種であるCatarratto(カタッラット)とZibibbo(ジビッボ)の2品種を交配し、新たなクローン品種Grillo(グリッロ)を作ることに成功した。その品種は、親交のあった醸造学の祖ジョヴァンニ・バッティスタ・チェルレッティ氏(※2)に敬意を表し、当時は「Moscato Cerletti(モスカート・チェルレッティ)」とも呼ばれていた。

 

また、彼の文献によればクローン研究の主な目的は、酒精強化ワインのマルサラにストラクチャーと豊かなアロマを加えられるようにすることであった。その後、グリッロはマルサラワイン(※3)の主要品種として生産を伸ばすこととなる。

 

 

■2つのタイプに分類されるGRILLO

 

グリッロは、生命力が強く比較的病気への耐性がある品種で、成長する過程では酸の数値を保ったまま糖分の充実を見込めることも特徴的なことの一つである。また、バイオタイプAとBが存在し、Aはよりフレッシュな印象のワインになり、ソーヴィニヨン・ブランにも似たアロマをもつ。Bはアルコール感があるしっかりした構成のワインになり、より複雑なアロマで蜂蜜のようなニュアンスもありマルサラに適している。

 

20世紀後半になると、マルサラワインの需要減退の影響などで生産量が減り続けていたが、近年はフレッシュな辛口の白ワイン(バイオタイプA)としての需要が伸び、トラーパニ県のみならず、シチリア州全域での栽培・ワイン生産が増えている。

1970年にイタリア全国ブドウ品種登録書に登録された。

 

 

■ワインの傾向は

 

シチリア料理と合わせやすいフレッシュで酸味のあるカジュアルで安価なタイプが多いが、凝縮感を備え長期熟成も可能なスタイルに醸造されることもある。また、酒精強化ワインであるマルサラの主要品種として使用されるとおり、非常に幅が広くフレキシブルな品種であると言える。

 

 

 

※1 アントニオ・メンドーラ男爵・・・シチリア州アグリジェント県ファヴァーラ出身の農学者。4,000以上のブドウ苗を研究していたとされる。

 

※2 ジョヴァンニ・バッティスタ・チェルレッティ・・・ロンバルディア州キアヴェンナ出身の研究者・醸造家。ピエモンテ州ガッティナーラにイタリア初の醸造学の研究室を設置。1876年、ヴェネト州コネリアーノにイタリア初の醸造学校を設立。

 

※3 マルサラワイン・・・スペインのシェリー、ポルトガルのポートとマデイラとともに世界4大酒精強化ワインと呼ばれる。原料となる白ワインにブランデーや白ワイン由来の蒸留酒を加え、木樽で熟成させる。白ワインベースの場合、グリッロの他カタッラットやインツォリアも使われる。

 

 

イタリアワインの土着品種とは?

土着品種とは、一般的に、その土地で生まれ育った固有の遺伝子型をもつ品種のことを指します。イタリアの土着品種2,000種を超えるとも言われています。南北に長いイタリアの国土、海と山に囲まれた地形、多様な気候、全20州の国全土でワインが造られているという唯一無二の環境がその土着品種が生まれ、また、それぞれの地域がもつ複雑な長い歴史と独自の文化がマイナーで作付けの少ない土着品種を守り抜いてきました。それゆえ、イタリアワインは複雑でつかみどころがありません。しかしその「多様性」こそがイタリアワインの魅力となっています。

 

 

 

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