イタリアワイン土着品種研究会Vol.32~宮嶋さんコラム ~

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【夏の終わりのプーリアに流れていた甘い時間】

 

総じてイタリア南部はのんびりとしている。その中でもゆっくりと時間が流れているのがプーリアだ。丘陵や山岳が多いイタリア半島には珍しく平野が多いので、風景もおだやかである。赤土の豊潤な大地に大きなオリーブの樹が並んでいたり、石灰大地に羊が放牧されていたりする景色はヨーロッパをあまり感じさせない。古代からプーリアは東方への入口なのだ。

 

赤土の豊潤な大地にはブドウとオリーブの樹々が並ぶ

 

肥沃な大地はブドウ栽培に適していて、近年プーリアはヴェネトに次ぐ大ワイン産地だ。濃厚なプリミティーヴォやネグロアマーロが有名なので、赤ワイン産地と思いがちだが、生産量の半分は白ワインである。実際、魚介類をよく食べるし、野菜料理が多いので、地元料理にはパワフルな赤よりもデリケートな白がよく合う。地元で愛されている白ブドウ品種がヴェルデカである。

 

 

ヴェルデカは、とても心地よく、魅力的なワインを生む。昔はバルクワイン、甘口ワインやベルモットのベースワインとしてイタリア北部に大量に売られていた。近年単一品種で醸造されるようになり、その真価を発揮し始めた。柑橘類、アプリコットのデリケートな香りにハーブ、ビターアーモンドのアロマが爽やかさを与える。口中ではフレッシュで、かすかに海を感じさせる塩っぽさがある。印象的なのはまろやかな酸だ。北ヨーロッパのワインのような身の引き締まる清冽な酸ではなく、包み込んでくれるやさしい酸だ。飲むとどこか寛げるワインなのである。

 

 

9月の後半に1週間ほどプーリアの海岸の町に滞在したことがある。夏の繁忙期は過ぎ、街は閑散とし始めていた。レストランもバカンス客相手にもう十分に稼いだとみえて、とりあえず開けてはいるが、あまりやる気はないといった気配だ。店内も空いていて、店主が友人のテーブルに腰掛けて話し込んだり、トランプをしたりしている。料理は海岸でとれたウニ、魚介類ソースのたっぷりのパスタ、魚介類のフリットなど素朴だがとても美味しかった。そこで毎日飲んだヴェルデカを懐かしく思い出す。生き生きとした軽やかな味わいがシンプルな料理にマッチしていたのはもちろんだが、やさしい味わいが夏の終わりの緩やかに流れる時間ととても合っていたのだ。

 

名物である魚介を贅沢に使った一皿

 

南イタリアを支配している甘い怠惰に寄り添ってくれるワイン。それでいてなぜかとても豊かな気持ちにさせてくれるヴェルデカ。大都市にいると時々無性に懐かしくなるワインである。

 

 

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