イタリアワイン土着品種研究会Vol.33~宮嶋さんコラム ~

 

 

Vol.33_GAGLIOPPO編

 

【古代ギリシャが残していったもの】

 

ガリオッポはカラブリア州を代表する土着品種だ。この品種から造られるワインは熟した赤い果実、チェリーのアロマを持ち、ハーブ、森の下草、甘草のニュアンスがとても魅力的だ。ボディーは力強く、タンニンは堅固であるにもかかわらず、ビロードのような口当たりで、アルコールの温かさを感じさせ、包み込むような味わいだ。身が引き締まるような峻厳な酸やタンニンが身上の北のワインとは対照的で、南の太陽を感じさせる包容力のある寛容なワインだ。

 

ガリオッポを使ったワインで最も有名なチロの産地はイオニア海沿いに広がり、古代ギリシャの植民地として繁栄を極めた。ここで造られる赤ワインはクリミサと呼ばれ、古代ギリシャのオリンピックの勝者に与えられるほどの名声を誇った。そのような栄光の歴史を求めてチロを訪れると拍子抜けするぐらいのんびりとした街である。1980年代から始まったイタリアワイン・ルネッサンスにカラブリアは乗り遅れたと揶揄されることがあるが、私はそうは思わない。カラブリアは大きな流れに乗ることが好きでないのである。もともと山がちで、交通の便が悪く、他州から切り離された土地柄であるが、住民も孤立を好んでいるような気がする。美しい海と自然に恵まれているにもかかわらず、観光業もシチリアやサルデーニャと比べると発展していないし、文化的にも交流を好まない。近代化の波に乗り遅れたからこそ、今でも昔風のスタイルのワインが残っていて、私には魅力的に思える。

 

イオニア海とティレニア海に挟まれた州なので魚介類も豊富だが、羊や山羊、そしてサルシッチャもとても美味しい。シンプルな炭火焼きにして、地元の非常に辛い唐辛子を添えるのが私は好きだ。そんな時はやはり伝統的スタイルのチロである。長い間大樽で熟成したチロはかすかな酸化のトーンがあり、地元料理と楽しむにはとても好ましい。スピリッツ漬けのチェリー、灌木、なめし革など熟成からくるアロマはとても抒情的で、広がりのある味わいは、のんびりとした街の雰囲気と完全に溶け合っている。タンニンが甘いので、料理なしでワインだけでも楽しめる。どこかエキゾチックなニュアンスを纏っていて、そこに強く惹かれる。やはりガリオッポは地中海のワインである。

 

 

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