イタリアワイン土着品種研究会Vol.34~宮嶋さんコラム ~

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Vol.34_GRECHETTO編

 

【重厚な赤ワイン産地に吹き込んだ一抹の涼風】

 

イタリアの「緑の心臓」とされるウンブリアは緑豊かな自然に恵まれ、小高い丘が波打つように続き、絵葉書のような美しい風景が広がっている。特に印象的なのは光と空気の清らかさで、まさに心が洗われる思いがする。聖フランチェスコの生誕地アッシジ、大学で知られる州都ペルージャ、芸術祭で有名なスポレート、宝石のようにチャーミングなトーディなど魅力的な村が数多くある。ルネッサンス芸術の痕跡が多く残り、歴史と文化の香りに満ちた州でもある。

 

料理もとても美味しく、特に素朴な家庭料理が絶品だ。オリーブオイルも卓越した品質で、著名な産地であるトスカーナに全く劣らない。ワインもそれほど知名度は高くないが、品質は優れている。特に濃厚なサグランティーノは20年ほど前に大ブームを巻き起こした。

 

私もサグランティーノの試飲会に頻繁にウンブリアに通った時期があったが、ウンブリアの静謐な雰囲気がとても好きだった。いくらサグランティーノの試飲でも食前には少しは白ワインを飲む。そんな時によくサーブされたのがグレケットであった。グレケットは昔からウンブリアで栽培されてきた白ブドウだが、単一品種として瓶詰され始めたのはその頃で、とても新鮮な印象を受けた。最初は軽やかでフレッシュで、香ばしい辛口白ワインという位置付けであった。その後、徐々に知名度が上がるにつれ、もう少し「野心的」なグレケットが出てきて、より複雑で、熟した果実のトーンを持つ品種であるグレケット・ディ・トーディにも注目が集まった。

 

サグランティーノのイベントで飲むシンプルだが溌剌としたグレケットが好きだった。アルコール度数が高く、タンニンが強烈で、味わいも濃厚なサグランティーノの試飲はなかなか大変で、一日試飲すると口中がタンニンでギスギスになり、かなり疲れる。そんな時、夕食前に村の広場で仲間と寛ぎながら、アペリティフとして飲むグレケットがとても美味しく感じられた。集中力を要求される昼のサグランティーノの試飲と次に始まるサグランティーノ主体の重厚なディナーの間の一時の息抜きタイムに提供されたグレケットはとても爽やかだった。ワインは必ずしも力強く、重厚であれば偉大とは限らず、時には軽やかさが心にしみることもあると教えてくれたのはグレケットだ。秋の気配が近づく収穫時期の夕暮れの涼しい風を受けながら味わったグレケットは、今でも深く記憶に残っている。

 

 

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