イタリアワイン土着品種研究会Vol.37~宮嶋さんコラム ~

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Vol.37_ROSSESE編

 

【野生のハーブと潮の香りに包まれて】

 

ロッセーゼは繊細な赤ワインだ。明るめのルビー色はブルゴーニュのピノ・ノワールを想起させ、香りはイチゴ、チェリー、森の果実、バラに地中海灌木が混ざり、白胡椒のトーンがはっきりと感じられる。口中では赤い果実が生き生きとしていて、軽やかで、タンニンはとてもデリケートだ。石灰土壌がワインに与えるスパイシーなニュアンスがとても魅力的である。13℃ぐらいの少し低めの温度で飲むとフレッシュな味わいが引き立てられる。魚料理に合う赤ワインとしても愛されている。

 

ロッセーゼの産地はフランス国境に近いリグーリア州の丘陵地帯だ。東西に細長いリグーリア州は南を地中海、北をアペニン山脈に挟まれ、平地がほとんどなく、海岸がすぐに丘陵となり、それがまたすぐに山脈となる。栽培可能な農地が少ないので、昔から急斜面に段々畑を切り開いてブドウ栽培が行われてきた。ロッセーゼの中心であるドルチェアックア村も海から10kmほど内陸に入った丘陵にある。標高300~600mの急傾斜の段々畑にアルベレッロ仕立ての老木が多く残っている。日中は海からの暖かい海風が常に吹いているが、夜になるとアルプスからの冷たい風が吹き付ける。海と山が共存している産地なのだ。

 

ドルチェアックア村に近い名もないトラットリアで昼食をとったことがある。リグーリア料理は海の幸(魚介類)と山の幸(キノコ、胡桃、ハーブなど)を使い、限られた食材をうまく組み合わせたものが多い。9月の中旬だったので、出回り始めたばかりのキノコの前菜とパスタをピガートやヴェルメンティーノの白ワインと楽しんだ。テラスからは午後の太陽を反射させて銀色に輝く地中海が見え、心地よい潮風はハーブの香りがした。メインディッシュは鯖をソテーしてプチトマト、ケッパー、黒オリーヴを添えた素朴な料理だった。それに合わせて少し冷やしたロッセーゼが提供された。鯖の独自の癖のある味わいをスパイシーなロッセーゼが見事に受け止めて、トマト、ケッパー、黒オリーヴがロッセーゼの地中海的アロマと完璧に調和していた。野生のハーブと潮の香りは午後の太陽とともに強くなり、食卓を包み込んでいるように思えた。昼食後の尽きることのないおしゃべりが終わるころには山から涼しい風が吹き始めていた。ロッセーゼを飲むたびに、あの幸せな午後を思い出す。生産量は少なく、まだ知名度も高くないが、私にとっては小さな宝石のようなワインである。

 

 

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