③浪花のリースリング王子が語る!今、私たちがドイツワインを学ぶべき理由
ヘレンベルガー・ホーフ株式会社山野高弘氏監修
「甘口で安価なワイン」というイメージから脱却し、近年大躍進を遂げたドイツワイン。今こそアップデートすべし!
では、一体どうやって学べばいいの?
最終回の今日は、ドイツワインの“難所”であると同時に一番の魅力でもある土壌の話、そして山野さんイチオシ「今飲むべきドイツワイン」についてお伺いしました!

100年変わらぬ独特のワイン文化を保ち続ける、フランケン地方の生産者シュテアライン&クレニッヒのシュテアラインさん。
◆ドイツワインの土壌が難しいワケとは?
ーアカデミー・デュ・ヴァンで教えていて、生徒の皆さまはドイツワインに対してどんな印象をお持ちですか?どこが難しいと聞きますか?
山野:「濁音が多い、ワインの名前が長い」とか聞きますね。でも僕の授業は、いきなり難しい話はしない。一発目から乾杯でスタートして、飲みながら僕の話を聞くというスタイルです。基礎的なデータとかは出しますけど、生産者とのふれあいとか彼らの歴史が授業のメインです。

ブルゴーニュよりも前に格付けが存在した1868年プロイセン王国時代のモーゼル地方生産者ドクター・ローゼンさんの畑(©️Dr.loosen)
それと、ドイツは土壌が複雑だ、難しいと言われているけど特別そんなことはないと思います。そんなこと言ったらアルザスだって、イタリアだって複雑でしょ(笑)。ブルゴーニュとかボルドーとかの方がだいたい一律の土壌で、特殊なだけ。
じゃあなぜこんなにドイツの土壌が複雑だと言われているのかというと、彼らは、生真面目に土地の情報を開示しているからです。
ドイツワインは全体的に低アルコールで果実味が強いわけでもなく、樽を効かせているわけでもない。じゃあ何を語るんだ?っていうと土地を語るわけですよね。
例えば、イタリアワインの場合だともっとハツラツとした果実感だとか、他に語ることがいっぱいあるじゃないですか?彼らの陽気さだとか樽だとか。土壌以外にも。

最初は「仲良くなるのに時間がかかる」ファルツ地方ベッカー醸造所のザ・職人ベッカー・シニアさん
その点ドイツワインは、職人気質の人々が繊細に土壌を表現しようとしているから、土壌が難しいと思われても不思議ではないです。
それと、昼夜の寒暖差もあり夜が冷え込みブドウの成長がゆっくりなので、根が土壌の栄養分を吸収して、ブドウに移るまでの期間も他の国や地域より格段に長いんです。だから、土壌の特色がワインに反映されやすいというのも特徴ですね。

ミッテルライン地方ラッツェンベルガー醸造所が所有する中世から存在する地下セラー
◆飲まずしては学べない!新しい時代のドイツワイン
ー改めて山野さんが思う、“ドイツワインを学ぶ意味”とは?
山野:まず、純粋に良いものなんで知って欲しいということがあります。他の地域と違って価格の高騰もなく(※)、コストパフォーマンスが良くてものすごくいいものが詰まってるんで。(※価格高騰がない理由は第一回で明かされています)
変に「学ぶ!」と力まずに美味しくって値段以上の味わい、さらに面白いストーリーがあるということを楽しんでいただきたい。

ミッテルライン地方に残る古代ローマ時代のトロッコの跡
あと、歴史が長い国なんで、背景がかなり面白いです。オールドワールドの中にニューワールドを発見するというような新鮮な驚きがいつもあります。80年代からドイツワインはガラッと変わっているのに、情報が今も古いまんまで止まっていることが多いんで全く違うジャンルの飲み物だと思って、一度飲んでもらったらわかると思います。そして、ドイツワインが美味しいということは、もう世界中が証明しています。名だたるソムリエさんや評論家の人たちがみんな絶賛しているわけですから。

第一回お届けゲヴュルツトナミナー(ボトルデザインは変更となる可能性があります)。
◆山野さんオススメ!今飲むべきドイツワイン
ーとにかく、実際に飲んでみて判断して欲しいと。では実際に「ドイツワイン通信講座」でお届けするワインのオススメポイントを教えてください。
山野:まず、第一回にお届けするゲヴュルツトラミナーについて。
ゲヴュルツって有名ですけど、実はフランスでもドイツでも1%に満たない生産量なんですよ。ゲヴュルツないんですか?って聞かれること多いです。
でも、どういう訳かみんな買わない。ゲヴュルツトラミナーという品種に興味はあるけど期待値が高い分、味を知ったら「こんなものか」と満足するというケースがほとんどです。

どういうわけかみんな買わない品種ゲヴュルツトナミナー。
でも、その点第一回目にお届けのこのゲヴュルツトラミネナーはリピーターがとても多いです。一回買ったら、ゲヴュルツファンじゃない人も買う。
ゲヴュルツはパンチの効いた甘くて濃いものが多いですけど、これは濃すぎなくてドライ、繊細なゲヴュルツのいいところだけとっている感じです。ヘレンベルガー・ホーフでゲヴュルツといったらこれです。

テキストより抜粋
次に、同じく第一回めにお届けのヴァイサーブルグンダー(ピノ・ブラン)。ピノ・ブランって世界で一番ドイツが作ってる品種なんですよ。
他の国にはおざなりにされているピノ・ブランですが、ドイツ人は昔っからこの品種に馴染みがあるので、一番いい畑のいい区画でちゃんと植えて丁寧に育てられています。
ドイツ人の生真面目さが結晶化されている品種なんです。

ドイツ人に最も馴染み深い品種、ヴァイサーブルグンダー
よその国ではまず感じられない、ピノ・ブランの本気が味わえるワインですね。ピノ・ブランて?って思ってる人にぜひ飲んで欲しい。
ドイツワイン知らない人がこれ飲んだら印象が変わると思います。こういう品種だったんだ、って。
料理は、和食にも合います。特に根菜に合う。いい意味での苦味があって、たらの芽などの山菜やふきのとうなんかにも。きゅうりにふきみそ塗ってかじりながら飲んでも美味しいです。
あとは全体的に、これだけ飲めばドイツワインがわかる!というラインナップを網羅的に選ぶとともに、その造り手の哲学や考えていることが十分わかるワインを厳選しました。

バーデン地方フーバー醸造所では必ずゼクトからテイスティングをスタート。
そして、個人的に注目しているのはゼクトです。ここ最近人気が出て、本当に売れるようになりました。ドイツの泡の美味しさが注目されるようになってきたか!と嬉しいです。
皆さんにもぜひ、飲んで感想を聞かせて欲しいです。
ードイツワイン通信講座受講生の皆さんにも感想(※)をお伺いしましょう!
山野:楽しみにしております!
◆全3回に渡ってお送りしてきた、山野高弘さんへのインタビュー「浪花のリースリング王子が語る!今、私たちがドイツワインを学ぶべき理由」いかがでしたか?
さて、インタビューシリーズ次回4/15(水)は、東京・経堂にあるドイツワイン専門店「CASSIEL/カシエル」店主森彩(もりあや)さんへのインタビュー「ドイツに11年住んだ彼女が今、ドイツワインにはまる理由」をお送りします。
(※ドイツワイン通信講座受講生の皆さんには、後日通信講座のアンケートをお送りし、お答えいただいた方には山野さんからのプレゼントを抽選で差し上げております。)
〜山野高弘さんプロフィール〜
ヘレンベルガー・ホーフ(株) 代表取締役社長。バーデンのフーバー醸造所、ラインガウのブロイヤー醸造所での研修を経て帰国。Riesling Fellow(ドイツワインの公的な広報機関 wines of germany 公認。アジア初、受賞時世界で16名のみ)アカデミー・デュ・ヴァン東京校、大阪校講師。